2012 オーストラリア皆既日食の思い出【後編】

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2012年11月13日

ついに明日の朝です。しかし、ここにきて不安要素も出てきました。果たして晴れるのか?パームコーブビーチがよいのか?もっと内陸へ行くべきか?北にあるポートダグラスはどうだ?道路沿いにある景勝ポイントではどうだ?船に乗って島へ行くのはどうだ?

インターネットの天気予報はそれぞれバラバラ。晴れるというのもあれば曇りというのもあれば雨というのもあり。ま、たしかに皆既日食の数分の間だけの天気なんて誰にも分かりません。仮に晴れていても、太陽の位置にだけ雲があればダメなるし、となりで雨が降っていても俺の視線の先だけ太陽が出ていれば皆既日食を見ることができます。

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パナソニックが皆既日食のUSTREAM中継をするというので、ポートダグラスエリアまで車で行ってみたけど、パームコーブビーチと大差ない感じでした。もうちょっと海がキレイだったらよかったのに、季節柄なのか、ポートダグラスもパームコーブも茶色い波。ただ、界隈は日食マラソンやホテルでの日食クラブイベントもあってパームコーブより盛り上がっている様子でした。

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道路沿いの景勝ポイントはヨサゲな場所もたくさんあったけど、その後のインターネット調査で皆既日食の時間帯には警察によって封鎖されることが判明。うーん、歩いて行くには遠すぎるし、いざ見ようとしているときに警官に横やり入れられるのも面倒です。

船に乗って島へ行くプランはさすがに前日のこのタイミングでは受け付け終了しており、これもナシ。

Twitterをリアルタイムで見ていると、内陸へ移動する人あり、北上する人あり、情報に揺さぶられそうになりました。

さまざまな情報を前にしつつ、外に出て空を眺めて見ると、ここ数日で一番の快晴。星がたくさん見えています。風もなく、実におだやかです。

・・・もうこれは右往左往せず、パームコーブビーチに願をかけ、意識を集中させるのがよさそうです。うん、こんな空は初めてだし、大丈夫な気がする。

そう決まったのが深夜2時過ぎ。2時間だけ仮眠を取って、パームコーブビーチへ向かうことにしました。

2012年11月14日

ビーチにはすでにたくさんの人がいました。巨大なカメラとPCをつなげている人、びっしりと書き込まれたノートを読み込んでいる人、ベンチで寝ている人。誰もがその瞬間を求め、ここに集まってきていました。

僕らもポイントを定め、海と対峙します。左右に巨大な雲があるけど、日の出の方角はココのハズ。このラインでそのまま登ってくれれば、ちょうど雲の隙間・・・。

サンライズ

5時34分。水平線から少しずつ太陽が登ってきました。雲もなく、バッチリな日の出です。自然と沸き起こる拍手。さぁ、これからです。

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太陽が、月が、そして僕らの座る地球が一直線上に並び、奇跡的な距離と大きさによって皆既日食が作り出されます。

少しずつ、少しずつ、宇宙の中をそれぞれが進み、5時44分、太陽の左上に月が重なりました。湧き上がる歓声。太陽が、みるみると月に蝕されていきます。日食グラスを手にしながらみんな大騒ぎです。

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しかし、上昇を続ける太陽はここで雲の中に隠れてしまいました。雲の向こう側では部分日食が進んでいるハズですが、何も見えません。しかし、太陽の昇る軌道の先は雲が開けています。このまま無風で太陽が昇り続ければ、皆既の瞬間はバッチリと拝めるはずです。このまま、このまま・・・。

皆既日食

うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!! 凄まじい歓声があたりを包みます。期待通り、雲を抜けて上昇してきた太陽は、月と重なりわずかな姿を残すだけになって現れました。太陽の面積残りわずか!これは確実に皆既日食が見られる!すごいことになる!!!! 大興奮に包まれています。

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と、そのとき。となりで見ていた家族の子供が、オヤジからコーヒーを買ってくるよう頼まれてました。ひ、ひどいぜオヤジ・・・!このタイミングでコーヒーとか買いに行かせるなよ・・・!

6時38分5秒、ついにその瞬間。太陽はキラリと最期の光を残して、姿を完全に月の後ろへと隠しました。頭上にあるのは見たことのない星。黒く、もやもやとした光を放つ星。明るかった世界は闇に包まれています。な、なんだこの星・・・?

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それは、太陽や月や地球という、絶対的な存在が消失した瞬間でした。もう日食グラスは必要ありません。いつもの目のままで、この異世界を体験できました。

美しいとか、怖いとか、そんな感情ではなく、地球上で作られてきたそんな感情ではなく、なす術なく空を見上げるのみ。となりのオヤジはおいしそうにコーヒーを飲んでいます。

そして、太陽が再び顔を覗かせてきました。

その刹那、キラリと見えたダイヤモンドリングと呼ばれるまばゆい光は、ダイヤモンドなんてまるで比較にならないほどの圧倒的な存在でした。

暗い母の胎内から産まれ出て、初めて見る外の光のような、まるですべての新しいものが切り開かれるような光。

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色を失っていた世界は再びカラフルに染まり始めます。光はすべてを温かく包み始めます。

僕は、産まれたときと同じように、感情のまま叫び、涙を流しました。

ただ違っていたのは、僕のまわりにはたくさんの友人がすでにいて、そのまま「じゃ、イクリプス定食でも食べに行きますか」なんて喋りながら、さっきの涙を拭くことができることでした。

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さぁ新時代です。楽しんでいきましょう。なんせ僕ら、産まれたばかりですから。さーて、次はいつどこの皆既日食を目指しましょうかね! 楽しい旅でした!