バーニングマンへチャリで行った話・2002【後々編】

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バーニングマンの素晴らしい日々を終え、えーと、帰りも俺、チャリなんだよね。帰り道の話を書いてみます。

9月3日 10:00 ブラックロックシティ出発

さよならブラックロックシティ。

昨日でイベントも終了し、たくさんの人が帰っていきました。 あんなに騒がしかったブラックロックもまた元の砂漠へと戻りつつあります。

今日は朝からとても風が強く、ちょっと不安な天候です。 まずはガーラックへ向かい、メシでも食ってから昼過ぎにエンパイアへ行き、夜にまた地獄道であるハイウェイ447を走りまくれば明日の朝にはピラミッドレイクに到着できるだろう。

なんだかとても寂しくなり、つい下を向いて歩いていたらてんでムチャクチャな方向へ進んでしまいました。

そう、イベントが終わったからって寂しがっていてはいけません。 下を向いていたら進む方向が分からなくなります。 ちょっとがんばって前を向いて進んでいこうと思います。

さよならブラックロックシティ。いざ出発です。

出口に向かう途中で車に乗ったトップレスのお姉ちゃんと、

「どこまで行くのー?」
「リノでーす!」
「本当にー? がんばってねー!」
「いえーい! サンキュー!」
「リンゴ食べるー?」
「食べまーす!!」

というやり取りの結果リンゴをもらいました。 トップレスということも含め、ありがとうございました。

12:30 ガーラックを通過しエンパイアへ
まいった・・・。

ものすごい強風でスピードがぜんぜん出せず、ガーラックへ到着した時点でヘトヘトになってしまいました。

んで、いつものようにコインランドリーで充電&洗髪をしてブルーノのところでメシを食おうとすると、なんと満席。さすがバーニングマン時期は繁盛してます。うーむ。

近くの「タワーパーク」という公園で時間をつぶしてみたけど、いつまでたっても満席だし、腹も減るのでエンパイアの町まで進むことに決定。エンパイアは10マイルも離れていないからすぐ到着できるでしょ。ということでスタート!!

15:00 エンパイアで嵐と遭遇
ヤバイ!

完全な向かい風で1マイル進むのも困難な状態!! しかもエンパイアに到着した途端にものすごい砂嵐!! 砂嵐で視界ゼロ。まさに一寸先も見えないほどの闇。さらに猛烈な風でチャリにまたがることもできない。車も進むことが危険なため止まっています。

どうするマゲオ、どうなるマゲオ?

うわー、こんな状況で大丈夫なんかいな俺。しかも疲労がついにピークに達したらしく、突然の鼻血!まったく止まることなくブハブハと出続ける血を喉に流しつつ、自分の体がかなりヤバイ状態であることを痛感していました。

思えば今回の旅を始めてからというもの、熟睡したことはないし、もう10日以上風呂に入っていないし、食べるものも皆様のおかげで例年になく豪華であったとは言え、カップ麺や慣れないアメリカ飯。

そりゃ疲れもたまるってーの。

危険だ・・・危険だよな・・この状況でハイウェイ447を進むのは・・・。
でも戻っても仕方ないし、進むしかないものな・・・。

とりあえず砂嵐が少しでも収まるのを祈りつつ、エンパイアストアの前に力なく座り込む。なんともかんとも底力が沸いてこない・・・。揃いすぎた悪条件に気力が薄れていく・・・。

そんな、生きる屍と化していた私に一人の男が声をかけてきました。

「あんたどこまで行くの? この風じゃ自転車はムリだろ。リノまでなら乗せていけるぜ」

マージーでー!!

はい。正直に言います。車に乗せてもらいました。

そのかわりリノじゃなくてニクソンまでにしました。リノにも行きたかったけど、ピラミッドレイクで汚れた体を清めたかったのでニクソンで降ろしてもらいました。

いやー、つーか本当にムリでした。あの状態では。

ブラックロック往復はかなりムチャな行為だったようです。もし挑戦するならブルーノのモーテルでしっかりと休んでからじゃないと、疲労が蓄積されまくった体ではとてもハイウェイ447は越えられません。

それにしてもさすが車は速い速い!

野菜スティックをボリボリ食ったり、変な岩に登って一休みしたり(疲労困憊だったけど岩登りに付き合いましたよ!)、デザートセージの香りで癒されている間にニクソンに到着してしまいました。すげー。

来年また会おうという挨拶を交わし、命の恩人とお別れしました。

そうそう、この男の人は2歳になる子供を連れていて、その子はバーニングマン3回目だそうです。ってことは0歳のときから!?

ニクソンストアの公衆電話でネット接続を試みるけどうまくいかず。食料を少しだけ買って、ちょびっと走って、ピラミッドレイクでキャンプです。つつつ、疲れたー。死ぬかと思った・・・。砂嵐もおさまってるし、明日はなんとかなるかな・・・。

9月4日 12:00 ピラミッドレイクで怒られる
ダメだ・・・。

キャンプをしてはみたものの、テントの外で何か動物の足音がしているのが気になってロクに眠れませんでした。
おそらく鳥だと思うのだけど、レイクタホでクマに襲われて以来、野生動物にはすごく敏感になってしまっています(音がするからテントを開けて見ても何もおらずの繰り返し。気のせいなのかな・・・)。

疲れはあまり取れていない・・。しかも飲み水の計算を誤っていたため残りが少ない・・。この先にお店はないので、仕方ないけどまた1時間かけてニクソンストアまで戻らなきゃ。

テントをたたんでそんなことを考えていると、腰にビッグマグナムを携えたポリスがやってきました(ドキ!!)。

「ハーイ。あんた、ちゃんとパーミッション取ってる? ここは許可を得ないとキャンプとかしちゃダメだよ」
「あ、ちょっと休んでいるだけなんですよ。すぐに出発します。いやー景色いいなーって思って」
「ドラッグとか武器とか持ってないよね?」
「ももも、持ってないですよー」
「ほい。それじゃ気をつけてな」

私の旅の心得として、テントは眠るとき以外は早めに片づけてた方が安全というのがあります。テントを思いっきり張っている状態で「ちょっと一休み」とか言い訳できないしね。

いやいや、パーミッションが必要なのは看板で知ってました。でもね、そのパーミッションが取れる場所がすげぇ遠いじゃん! チャリの私にどうしろっていうの! だから勝手にキャンプしてたのよーん。てへ。

しかし長居は無用だな。そそくさと立ち去ろう。

16:00 ビジターセンターに甘えてみる
ニクソンストアに到着。水とパンを購入。これで一安心。ブラックロックへ行くときにはここの公衆電話からネットへ接続できたのに、今は何度試してもうまくかない。なぜだろう?? 思えばもう10日以上もネットへつなげていないや。メール溜まってるんだろうなー。

音響カプラー+公衆電話での接続には限界を感じたため、ちょっと頭をひねってみました。

すぐそこに「ビジターセンター」がある。
ビジターセンターのおっちゃんはすごくいい人で、2年前の俺のことを覚えていてくれた。
ビジターセンターでお願いしてモジュラージャックを貸してもらおう!!

そうと決めたらさっそく訪問です。
「お! あんたバーニングマンから帰ってきたんだね!!」
と、いつものようにすごく人のよいおっちゃん。
ちょっと話をした後で本題に切り出してみました。
「ネットへつなげたいんだけどモジュラージャック貸してもらえませんか?」
おっちゃんは「こりゃ突飛なお願いだな」という顔を少しだけしましたが、快くモジュラージャックを貸してくれました。
やった! これで久しぶりにネットへ接続できるぞ!!

ええっと、モジュラーケーブルをつなげて・・・接続!! ん、接続しない・・・。「応答がありません」って、なんだ??

確かに電話回線は生きている。おっちゃんのPCからは問題なくネットへ接続できている。設定にはまちがいがないハズだし、いろいろ試してもみた。

しかし、「応答がありません」のエラー!! ダメ元でおっちゃんPCのモジュラーケーブルを引っこ抜いて私のVAIOにつなげてみたけど、やっぱり「応答がありません」になる。

ひょっとしてVAIOのモデムが悪い・・? よく分からないけど、接続できないまま終了。

ビジターセンターの皆さん、ご迷惑をおかけいたしました。本当にありがとうございました。

みんなもニクソンに寄った際にはビジターセンターを訪問しましょう!!(おっちゃんにやたらと「また来年会おう!」と言われまくったけど、チャリはもう大変なんですよ・・・)

それでは今日の寝床であるWINO BEACHを目指すことにします。ピラミッドレイクでまたキャンプなんで、ビッグマグナムポリスに怒られませんように・・・。

19:40 WINO BEACH到着
やばいなぁ・・・。体調は完全に最悪。眠ろうとしても眠れない。しかも昨夜と同じくテントの周りを何かが歩いている音がずっとしている・・・。気のせいなのかな・・・どうも落ち着いて休めない・・・。

体だけじゃなくて気持ちが疲れきってしまっている・・・。旅の日程には余裕があるし、ピラミッドレイクでゆっくり身を清めたかったのに、キャンプで体力が回復できていない自分がくやしい。なんだよ俺。こんなに快適にキャンプできてるんだから休めよ俺・・・。

弱った。

というわけで決めました。もうリノへ帰ろう。

これ以上キャンプ生活を続けていては体が本当に壊れてしまう。思えば2週間近く熟睡してないし、風呂にも入っていない。お金はあんまりないけれど、カジノで勝つことを祈りつつ、今夜中の出発を決定。

夜の2時過ぎに出発すれば朝にはリノへ到着できるハズ。時間はたっぷりあるからのんびり走ろう。疲れたらリノの手前にある町で宿を探してみるのもいいだろう。無事にリノへ戻ったら、ウマイもの食べて風呂に入ってテレビを見てベッドに潜ってしっかり休もう。

ハッピーな目標を定めたら気力が蘇ってきました。

このまま無事に戻れますように。ここまで生きて帰ってきたんだから、こんなところで死にませんように。

空は星座板を丸ごと転写したような完璧な星空。増水気味の天の川も180度の大パノラマで見えます。
テントを閉めると星空が見えなくなってしまうけど、今の俺にはわずかでも休息が必要。眠れなくても、横になっておこう。

体力回復しますように。このまま無事に戻れますように・・・。

2:12 WINO BEACH出発
あまり眠ることができず体調は最悪なまま目が覚めました。フラフラしつつテントを片付けます。空を見上げると、これまで以上に満点の星空でびっくりしました。

そうか! 今日は新月だ!!フラフラのまま道路に出て走り始めると、それまで気づかなかった新月の恐ろしさを痛感させられました。

完璧な暗闇・・・!!!!!!!!!

一寸先は闇なんてもんじゃない。まったく何も見えない暗さ!! チャリのライトが照らしているわずか数メートルの他は、右も左も後ろも完璧に暗闇です。気をつけなきゃ、道を外れないように・・・死なないように・・・。

虚無に囲まれたまま、ハイウェイ445に入る横道を見逃さないように精神集中させつつ、走る、走る、俺。来たときは満月だったのにね。二週間早いなー。

3:15 ピラミッドレイクストア到着
来たときと同じように、ピラミッドレイクストア脇の小屋でVAIOを充電です。また犬が吠えまくっていて気になるな・・・。撃たれませんように・・・。

ピラミッドレイクストアの公衆電話からネット接続を試すがうまくいかず。なぜだろう。なんとかネットにつなげて日本語のメール読んだりしたいな・・・もう気持ちも体も限界・・・。

5:32 ハイウェイ445を走る
だんだん日が昇ってきそうです。
ふと気づくと、すごく小さな弓張り月を発見! 今日は新月ではなかったようです。どこに隠れていたんだよー。

汗で体が冷えてくるためフリースソックスに履き替えです。高かっただけあってなかなか快適。
点滅する街灯の下でパンとソーセージをむさぼり食いました。早く暖かい食事を取りたいな。もうすぐリノかー。俺は、こんなところで何をやってんだろなー。

疑問はつきないけれど、とにかく星空はすごかった。

6:55 通勤の車に萎える
朝になりました。

知りませんでした。

ハイウェイ445って通勤道路なんだ・・。

私の横をものすごい数の車が疾走して行きます。バーニングマンに来ているようなクレイジーな車たちではありません。ごく普通の、日常の、当たり前すぎる車たちです。

信号がないからとぎれることなく車が列をなしています。日本の高速道路脇をチャリが走っているようなもんでしょうか。明るいこともあって、なんだか気持ちが非常に萎えてしまいました。

8:00 スパークス到着
やっとの思いでリノの隣町、スパークスエリアに到着。 ドライブスルーのスターバックスの横に公衆電話があったため、ダメ元で音響カプラーを使って接続を試す。

1回目・・・失敗。うーむ。故障かなぁ。最近まったく接続できないぞ・・・。
2回目・・・お、認証している!!接続成功!!!実に10日振りとなるインターネット接続に成功しました!

久しぶりの日本語、しっかり癒されました。

9:48 DEER PARKで一休み
なんだか気持ちのよい公園があったため、さっき受信したメールを読もうとちょっと寄り道。

んで、いろいろやっている最中にバッテリーが空になってしまいました。
うーむ、この公園で充電できれば最高なんだけどなー。どこかコンセントないかなー。だいたい掃除用のとかあるはずなんだけどなー。

おおお! 発見!!

この公園はなかなかデカくて、バーベキュー用のエリアに念願のコンセントを発見!
生きているかどうかチェックするため、さっそくコンセントをつなげてみると火花がパチっとしました!

そう、生きているコンセントはだいたい火花が飛ぶのです(関西電気保安協会に怒られそうだ)。

ホームレスの皆さんの注目を浴びつつVAIOを操作するマゲオ。ゆっくり、しかし確実に充電されていきました。

12:30 Americana Innにチェックイン
やっとこすっとこリノに到着です。
到着の感動とかそういうのより、とにかく早いとこ休みたくってたまりませんでした。体もメチャクチャ汚いし。以前に泊まった「アメリカーナ・イン」が一泊20ドルでなかなかきれいでよかったので、またそこに泊まることにして、先を急ぎます。とりあえず休むぞー!

が、んが。

確かに今日(木曜)は20ドルだけど、明日(金曜)はウィークエンド・プライスで40ドルとのこと・・・。いやいや、知っていますよ。ウィークエンド・プライスのことは。でもやっぱり痛いなぁ・・・。それでも安い方なのでとりあえず2泊することに。

汚れた体と衣服とカバンをバスタブで洗いまくります。やっときれいになってきました。砂埃のない部屋。エアコン。テレビ。ジャブジャブ出る水道。流れるトイレ。

文明社会に戻ってきました。

またリノ、かー。なに食べようかなー。生きててよかったー。今日は久しぶりにゆっくり休むことにしよう。もうなにもしない、ただひたすらリラックスで。

やっぱり砂嵐にはかないませんなー。バーニングマン生活を終えた後の体力の落ちもすごかった。

無事に生きて戻れたことは本当にラッキーだったと思います。助けてくれた皆さん、応援してくれた皆さん。本当にありがとうございました。

おしまい。

追伸。本当に生きて帰れてよかった。すべてに感謝。

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