バーニングマンへチャリで行った話・2000【中編】

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8月25日 Hwy445

まずは 4th Streetをひたすら東へ走ります。深夜だから車も人もまったくいなくて実に快適!! ずーっと直線道路なのでスピードをおもしろいくらいに出せ、チャリって最高! ガンガン進む。

そして順調にハイウェイ445に到着。後はこの445を進んでピラミッドレイクに行って、446を少し走って447でゴール! たーのーしーみー!

Hwy445はなんとチャリ専用道があって、しかもここも見事な直線道路なのでなにも恐れずにひたすら進みます。

「ニンニキニキニキ ニンニキニキニキ ニシンガサンゾー♪」と歌なんて歌いつつ走りまくりです。実は夜道を一人で少しさみしかったんだけどね。

目の前にはどこまでも続く一本道、夜空には満点の星たちと見事な弓張り月。ただ走っているだけでかなりのトリップ感。俺ってスターライトエクスプレスだわーん。

どんどこどんどこ走りまくると少しだけ町になってきて、信号機があったりセブンイレブンがあったりしたのでちょいと寄り道。
温かいコーヒーとドーナツで一服。

ふー、始まったばかりだけど楽しい旅になりそうだ。寒えこむ夜にコーヒーがうまい。おっしゃ、行きますか!

「にーしーへー、ひーがしへー、ひがしへにーしーへー♪」と大声で歌いつつ走る、走る。とにかく走る、走る。

走る、俺。

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イーグルズ・キャニオンにて。周辺には家もなく、かなりな暗闇。とりあえず目立つようにとオレンジ色のスウェットです。

・・・が、つかない。だんだんと空も白み始めたのにピラミッドレイクのピも見えてきません。しかも気がつけばなんだか山を登ったり降りたりしてます。さっきまでとは明らかにちがう雰囲気になってきてます。

息を切らせながら山を登って、下る。そんなことをもう何度も繰り返しています。まわりが少しずつ明るくなってきました。巨大な空は赤や青に色を変えながら見事なリズムを作ってます。

しかし、今の俺にとってはそんな大空のイリュージョンに感動している余裕はまったくなし!とにかく日が昇る前にピラミッドレイクに着かないと、灼熱の太陽の下を走るのは危険すぎる・・。とにかく日が昇る前に進まないと・・・。

あれ? う、牛がいる!? さっきまで暗くて気がつかなかったけど、角のあるノラ牛(柵がない状態で放牧されている牛)がみんなでこちらを見てるじゃん! 怖い!

しかも俺が走ると横を着いてくる! 一応アスファルトの上には出てこないみたいだけど、人っ子ひとりいないこの環境でノラ牛と一緒に走るのはかなり怖い!

逃げるように走りまくる。でも行けども行けども新しいノラ牛がまた・・・。

なんとかかんとかノラ牛を振り切ってピラミッドレイクの近くにある(ハズの)ピラミッドレイクストアに到着。なんともう朝の8時。日もすっかり昇ってしまいました。

とにかく急がないと。このまま暑くなってしまったら走るどころじゃないぞー!!

ピラミッドレイクストアから「Indian Reservation」とやたらめったら看板が出ている道をひた走り、山を上って降りて上って降りて上ると・・・見えましたピラミッドレイク! そしてハイウェイ445と446の交差点!

このまま右に進めばバーニングマン会場、左に行けばピラミッドレイクのキャンプ場、さぁどちらに進もう?
先を急ぐか、一休みするか。

ええい、右だ右! やっぱり少しでも早くバーニングマンに行きたい! とにかく先へ進むのみ!

このままブリブリで行きますぜー!!

6

しかし、ハイウェイ446を走り初めると急に疲れが襲いかかってきました。

強烈な日差しのせいかもしれません。ううーむ、これはやはり休んだ方がよさそうだ・・。頭がクラクラする・・・。

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 8月25日 ピラミッドレイク

少し進むと左手に巨大な岩が見えてきました。頭上から砂漠の強烈な太陽が照りつけまくる一本道、よし、あの岩陰で一休みしよう。

ううううーむ、なんかクラクラする。おかしい。寝不足もあるだろうし、少し眠れば楽になるのかいな。とにかく岩陰で横になり、軽く一眠りすることに。

しかし1時間くらいであっさり目が覚めてしまいました。

・・・そそそそ、そして、なんだこの体調の異変は!

ものすごい目眩がしている!世界中がグルグルグルグル回っている!! た、立ち上がれない! 体に力が入らない! 意識が遠のいていく・・・。

・・・まずい、これはまずいぞ俺。意識を集中しないと気を失ってしまいそうだ。強烈なバッドトリップに襲われたかのように、自分でコントロールできないほど意識が飛ばされそうになる。

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ぐぅわぁああ!! おい、誰かいないの!? 日本でいつも助けてくれているみんなはここにはいない・・・。

モンドさーん、タイガァー、ヒラノのおっさんー。

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意識をコントロールするのには慣れているつもりだったけど、どんどん持って行かれてしまう。次々とバッドな想像が頭の中を駆けめぐる。

あははは、こんなところで死んでも誰も発見できないだろうなー。これが俺の最後ってのも俺らしいなー。見たかったなーバーニングマン・・・。

とにかく気力を振り絞ってM&M’sを食べ、水をガブ飲みする。もう世界の上も下も分からなくなってきた。ビタミン剤も飲んでおく。

ヤバイ・・・マジで最悪だ・・・。意識が遠のいていく・・・。

・・・、・・・・・、・・・・。

・・・ん、目が覚めた・・。気分はまだ悪いけど、なんとか動くことはできそうです。

手足の感覚がない。まったく体に力が入らない。でも、ここでは危険すぎる。少しでも先へ進んでみないと。最悪でも車に発見される場所まで進んでおかないと・・・。

ヨロヨロ走っていると左手に「WINO BEACH」という看板が見えてきました。

ピラミッドレイクは巨大な湖なので、いろんなところに休憩のできるビーチがあります。灼熱の太陽の下、とにかく涼しいところへ行きたくてフラフラとビーチへ向かいました。

おおお、水辺が見えてきた・・・。砂浜にチャリを横倒しにし、服を脱ぐ気力もないまま湖に入る。

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ぷうううーーーーーはぁーーーーーーー!!!!!!!
きーーーーもちいいいいいいいいいい!! さ、サイコーーー!!

なんだか体の感覚が一気に戻ってきました。視界もはっきりしています。ふと横を見るとすぐそこでノラ牛も水浴びをしていました。まだやっぱり牛は怖い・・。牛たちと目を合わせないようにしてプカプカ水に浮かんでいると、心地よい疲労感とともに空腹感が生まれてきました。

って、これよこれ!忘れていたのはこの心地よい疲労だよ!

生き返った。さっきまでの脱出不可能なバッドトリップから一気に生還しました。砂浜に上がってマフィンケーキを食べる。うまい。助かった。生き延びた!! なんとか頭もシャッキリしたので、再び先へ進みます。

かなり日差しがきつくなってきたので着ているものをすべて水浸しにしてビショ濡れな状態でチャリをこぐことに。あー、気持ちいいー。でも少しクサイ・・・。

そして水浸しの体はものの30分ですっかり乾いてしまい、またつらい時間が・・・。

ここから次の町、ニクソンまでは13マイル。近い近い!
しっかりがんばって走るぞー!

ニクソンがどんなところか知らないけど、いい町であってくれよー!

8月25日 ニクソン

ブリブリ進むと、お、あれがニクソン?建物が見えてきました。変な建物が見えてきました。

近づいて見てみると「Nixon Highschool」という看板が立っていました。ううーむ、休みたいけどハイスクールで休むのは難しいだろうなー。どう見ても不審者だもんなー。

仕方ないのでもう少し先へ進むことに。

すると「VISITOR’S CENTER」なる建物を発見しました。なんだか分からないけど、俺がビジターなのは間違いない!ってことで堂々と中へ入ります。

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館内ではここら一帯に暮らしていたネイティブ・アメリカンたちのさまざまな資料が展示されていました。なかなか立派な展示物です。

展示物を見た後はトイレに入って顔を洗い、ソファで一休み。ここって自動販売機とかないのね。でもクーラーが快適だわーん。

んで、中にいたおっちゃんと話をして、ここがちょうどリノから30マイルで、バーニングマン会場から一番近くにある町、ガーラックまではあと60マイルあると教えてもらいました。しかも地図を見る限り、ニクソンから先はガーラックの手前の町、エンパイアまでなにもない・・・。

走りきるしかない、ってことか。

というわけでココで賭けに出ました。

今、チャリに水が3ガロンある。

が、水はエンパイアでも手に入れることができるので、水の量を減らして走ろう。そうすれば軽くなって速く進めるハズ!!

てなわけで1ガロンを頭からかぶり、重量4kg減。行きまっせー!! ただいま13時。太陽は真上から照りつけてくるけど、ブリブリ走り続けます!!

*ここからが地獄となる・・・。今思えば、なに急いでんだよ俺・・・。

8月25日 Hwy447

暑い暑い暑い・・。休めそうなところがどこにもない・・・。足が重い・・・。超スピードで横を走り去るトラック(激突!みたいなの)が怖すぎる・・。さっきから山を上って降りての繰り返しをしている・・。

おいおいおい! こんなのを登らせるつもりかよ! というような山をやっと登りきったらすぐに次の山。果てしなく続くネバダ山脈を登って降りて・・。ううううー。

そしてさっきからどうもすぐに息が上がると思ったら、ここって実はけっこうな高所なのね。空気が薄いんだ! そのせいか・・・いくら呼吸をしてもぜんぜん体に行き渡っていない・・。

・・・いつのころからかペットボトルの水を飲むときに、必ずよく振ってから飲むようにしていました。メリットがあるのかわからないけど、振ることで水に少しでも空気を溶かして、酸素不足を補ってやろうと考えていたのです。

しかしネバダ山脈は本当にすごい。

アスファルトで舗装された道路だけは地球上の雰囲気を持っているけど、それ以外の景色は完全に他の惑星。ゴツゴツとした岩が飛び出ている地面ではビバーク(緊急時のムリヤリキャンプ)すらできそうにありません。

疲労もピークになってきた・・・。そして山はどこまでも連なっている・・。

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左手にピラミッドレイクを眺めながら、どこまでも続く坂道を上る。歩道なんて一切ナシ!!!!!

日差しを遮るものはなにもなく、道はどこまでも続いている。疲れた・・・。休むか、テントでも建てて軽く眠ろうか。そんな気持ちにもなってきました。でも、この環境ではテントを張るのも苦労しそうだ。それだったらもう少しでも進んでみようか。

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それにしても猛スピードで行き交う車が怖い。そりゃそうだ。誰もこんな砂漠のど真ん中をチャリで走っているヤツがいるなんて考えていないだろう。

夜走るのは本当にこりゃ危険だな。いくらリフレクターや光り物を身につけたとしても、車が意識してなかったら役に立たないもんな。

日本から大事に持ってきた「熱冷まシート」を頭と首筋に貼ってみたけどぜんぜん熱を冷ましてくれない・・・。汗でずれるし。
ううーむ、薬局で発見したときには「これはバーニングマンで役立つはず!」と思ったけど、失敗だったな・・。3箱も買っちゃったい。ジャマなるし、どこかで捨てていこう・・。

たまに「見るからにバーニングマンの参加者」というようなボロっちい車がクラクションで励ましてくれたり、「BUUURRRNINGMAN!」と声援を送ってくれたりして、そのときばばかりは俺も大声で返します。そんなんいいから乗せてー、というのが正直な気持ちだけど、励まされるのはうれしいもんです。

とにかく早くバーニングマンへ行きたい! どこまで続くんだよ、この道は・・・。もうひたすら登って降りて、走る。あまり記憶がはっきりしていないけど、とにかくつらかった。

道路の脇に「46」とか「47」って、何マイル進んだのか示す白い標識があるんだけど、その数字がぜんぜん増えていかないのです。1マイル進むのってこんな遠かったっけ?

あと何マイル?
どこまで行けばブラックロック?
エンパイアの町はどこ?

足が重い・・。暑い・・・。ビバークしようか・・・、いや進もうか・・・。

8月25日 エンパイア

と、遠くに緑が見える!砂漠の果てに緑が見えるぞぉおおお!! あれこそまさにエンパイア! エンパイアにまちがいない!!つ、ついにエンパイアの町が見えてきた! いーーーーえーーいーーー!!

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エンパイアの町は砂漠の真ん中にあって、その周辺にだけちょびっと緑の木が生えているのです。ドラクエみたいです。ずーっと茶色の景色ばかり見ていて、遠くに緑が見えたときはかなりの感動モンでございます。

首の皮一枚つながった状態でエンパイアに到着。ここには小さなスーパーマーケットがあるのです。冷たいペプシを飲んでタコスを食べて体力回復! いやー、うまいねぇ。生きててよかったねぇ。

インターネットも30分1ドルという格安の料金で利用できるみたいだったけど、おっちゃんがずーっとやってたため断念。

バーニングマン連中っぽい人もたくさんいるし、公衆電話もあるし、女の人が車の中で化粧なんてしちゃってるし、なんだかすごく落ち着くわーん。やっぱ文明っていいよねー。

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バーニングマン時期は一番の稼ぎ時なんでTシャツ屋やアクセサリー屋など、いろいろ来てました。

ここまで来たらブラックロックまではあと少し。とりあえずはガーラックという最後の町まで進めば、ほとんどゴールしたも同じです。ガーラックにはモーテルもあるし、今日は奮発してモーテルに泊まりますか! 行きますか! 行かれますか! いえーい!!

ブリブリブリブリブリブリ(チャリをこぐ音)
ブリブリブリブリブリブリ(もっとチャリをこぐ音)

8月25日 ガーラック

そして、あっという間にガーラック到着!すごいぞ俺! エンパイアとガーラックはこんな近かったんだ!

「BRUNO’S COUNTRY CLUB」の看板が見えてきました。ブラックロック砂漠に最も近い、最後のモーテルです。あれ? あんなとこにガソリンスタンドなんてあったっけ? コインランドリーもある・・・。ひょっとしてブルーノのおっちゃん、バーニングマン客目当てでマルチな商売を始めたんじゃ・・。

ひとまずコインランドリーのトイレに入って顔を洗って、今日はモーテルで休むことに決定です。んが、えええっと、オフィス(受付)はどこ? さっきからモーテルの周りをグルグル回っているけどオフィスがないぞー。ううーむ。ちょっと迷っていると半裸のおっさんが声をかけてきました。

「おーい、あんたなにを探してんだい?」
「あ、オフィスはどこかなーって」
「ここを少し行ったところのバーの中にあるから行ってみなー」
「へ、ここより先なの? バー? うぃっす分かりましたサンキュー!」

ということでオフィスは少し離れたバーの中にあるみたいです。一本道なのでとりあえず進むと、あれがバーか! やっと発見。ド汚い格好だけど度胸で入ってみます。

「まいど、ブルーノのモーテルに泊まりたいんだけど」
「ん、ブルーノ? ちょっとそこにいるからちょっと待って」

・・・・・

「あいよ、モーテルに泊まりたいんだって? ひとり?」
「ひとりです」
「んじゃここにサインして。今カギを持ってくる」

書類に名前を書いているとバーで飲んでいたオバハンが喋りかけてきました。

「あなたどこからやって来たの?」
「リノからです。自転車で」
「リノ? 自転車で? なんで? あっはっはっはー(高笑)。ひとまず今日はシャワーでも浴びた方がいいわよー」

は!た、たしかに体中汚いし変な臭いを放っている・・・(よく考えたら、岩山で眠ったりピラミッドレイクで水浴びをしたりしたままの格好だ)。冷静に見るとかなりヤバい男だな俺って・・・。

そんなわけでブルーノのモーテルに無事チェックイン。バスタブがないシャワールームだったり、テレビのチャンネルがひとつも映らなかったり、冷房をコントロールすることができなくて寒かったりしたけど、砂漠のキャンプとは比べられないほど快適。

日本から持ってきた「お湯でボイルすると食べられるレトルト食品(おこわ)」を最高温度のシャワーで作れないもんかと実験してみたけど失敗。ちょいと堅かったです。

そんなこんなで、しっかり眠る。ぐぅ。

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