書評:全記録 スワノセ第四世界: 日本のヒッピー・ムーヴメント

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「私も90年代・00年代を過ごしたかった。第三次薬物汚染の時代、マジックマッシュルームも合法だし危険ドラッグもあったし、野外レイヴも自由でおおらかですごく楽しそうに思える」というような幻聴を、現役JDから言われることがあります。

当事者(私)にしてみれば、狂ったヤツもいれば死んだヤツもいるし、クソネタ掴まされることだってあったし、

いまの時代の方が、アメリカに行けば超ハイクオリティなマリファナを尻から煙が出るまで吸いまくれるし、オランダに行けば安全な環境でマジックトリュフを食べまくることだってできるし、

どう考えたって90年代・00年代よりよいと思うのだけど・・・

体験したことのない時代に憧れるというのは、誰にもあることなのでしょう。

私の場合は60年代・70年代の「ビートニク」や「ヒッピームーブメント」が、その対象でした。

自分たちを「部族」と名乗り、各地に「コミューン」という共同体を作って(ライヴストリーミングスタジオの「DOMMUNE」は「COMMUNE(コミューン)」の次の存在を目指すという意味)、当時は合法だったLSDや、規制のゆるかった大麻を使って精神の拡大を行っていた人々。

※ちなみに、日本における大麻取締法違反の第一号は東京国分寺のコミューン「エメラルド色のそよ風族」のメンバーだったそう

私は、ヒッピームーブメントの「中の人」であるポン(山田塊也)さんが書いた「アイ・アム・ヒッピー」や

ナナオサカキのたくさんの詩、

ゲーリー・スナイダーと山尾三省さんの対談集などから

本当にたくさんの学びをいただきました。つーかすげぇプレミア価格になってるのな。売らんけど・・・。

で。

日本のヒッピームーブメントで欠かすことができないのが「諏訪之瀬島(スワノセ)」の存在です。

鹿児島の離島・スワノセに「バンヤン・アシュラム」というコミューンを築きながら、突然やって来たヤマハのリゾート開発と対峙した部族の人たち。

ポン(山田塊也)さんの「アイ・アム・ヒッピー」にも、そのときのことがたくさん書かれているけれど・・・

当時の様子を動画として記録した、「スワノセ 第四世界」というドキュメンタリー映画があるのです。

ただ、このドキュメンタリー映画はメジャーレーベル制作ではなく自主制作映画ということもあって、これまでパッケージ化されておらず、私のような輩の世代でさえ、ほぼ伝説の存在でした。

で。

その「全記録」と題した書籍が出ていたので読んでみました。やっと前置き終わりです。

内容(「BOOK」データベースより)
時代は昭和、南海の孤島・諏訪之瀬島で文明社会に背を向け自然に生きようとした部族の人々。その生活と思想、歴史のすべて。

368ページの大ボリューム! 表紙をめくると「部族新聞」や、かつてのスワノセの写真など、非常に期待させられたのですが・・・

読み進めていくうちに、あれ? いま俺シラフだよね? と思うこともしばしば。

私は「部族」のことや、スワノセのことを知りたかったのだけど、映画の監督である上野圭一氏の生い立ちや、著者であるシオザワ氏の思い出話や持論がずいぶんと長く続くのです。

「でもこれ、大きな伏線なんだよね。これからすごい展開になるんだよね」と、自分を納得させながら読み進め、漫画家・松本太陽氏の父が映画スワノセのパトロン的な存在だったとか新しい発見もありつつ、かな漢字使いや、文章の言い回しの読みづらさに耐えつつ・・・

うーん。

大変失礼ながら、「部族の人々。その生活と思想、歴史のすべて」というキャッチは、風呂敷が大きくないですか・・・?

私は部族関連の書籍をたくさん読んでいたので、登場人物のバックグラウンドなんかもある程度は知っていたけれど、この本だけで「生活と思想、歴史のすべて」を知るのは少しムリがあるように思えます。それなら「アイ・アム・ヒッピー」の方が当事者目線で詳しく書かれています。

著者のシオザワ氏は部族メンバーではなく、学生運動に加わりつつもしっかり就職して、もちろん当時のスワノセに住んでいたわけでもなく、マリファナもLSDもやらずな人です(私とはえらい違う!)。

シオザワ氏と部族メンバーを結びつけたキッカケは、当時テレビ局で働いていた上野氏が、アルバイトとしてやって来たシオザワ氏に「ヒッピーグループの内情を知りたいから潜入してみて」と依頼したこと。

潜入したシオザワ氏は他メンバーから「3日前に来たばかりなのにずいぶん親しくしてくる」ということで「3日前」というニックネームを付けられ、最後にテレビ局の仕込みだとバレたときは「おまえテレビ局の人間だったのかよ」と(たぶんポンさんから)言われており・・・

もし、自分が「潜入される側」の存在だったら、二度と会いたくないだろうなと思いました。クラブやレイヴにもいましたよね。ファッションと勢いはすごいあるけど、2時間くらい踊ったらテントに戻るヤツ。

朝までいろよ!!!!!! と。

泥水に倒れるまで踊り続けろよ!!!!!! と。

コミュニティやムーブメントをどう記録していくか? というのは非常に難しいものがあります。

特に、法律スレスレの行為を含んでいると、記録されたがために「揺すられる」かもしれません。

私もマジックマッシュルームの成長記録とかLSDの画像とか、もっと残しておけばよかったと思うけれど、

その渦中にいるときって、そういうのは「野暮ったい」んですよね・・・。瞳孔開いてんのにクラブで写真とかありえないでしょ。

えらい後日になってから、寓話として書くくらい・・・

というわけで、そもそもマニア向きな本だと思いますし、マニアな皆様いかがでしょうか。貴重な一冊であることは間違いないです。

そして、ついに「スワノセ 第四世界」がDVD化されたそうです。購入したい人はハガキでオーダーだΣq|゚Д゚|p ワオォ

映画『スワノセ・第四世界』のDVDを販売します。 – 〜沈黙図書館〜  by Jasmine-editorial

私もDVD買います。えーと、DVDってどうやって再生するんだっけな・・・。ハガキっていまいくらで送れるんだっけ・・・。