バーニングマンへチャリで行った話・2000【おまけ】

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死の淵をはい上がってチャリでブラックロックに到着した私はバーニングマン終了後、どのようにして帰ってきたのでしょう? イベント終了後の帰り道の話です。

9月4日 ブラックロックデザート

その日はなんだか空模様が怪しく、雨がパラつくこともありました。風も吹いていて、嵐の予感さえしました。

多くの参加者たちは早々に会場から引き上げようと、そこら中で「取り壊し」作業を行っていました。私はバーニングマンの燃え跡にお参りし、センターキャンプに寄って、親しくしてくれてたゲイのマッサージ師と挨拶を交わしました。

Illumination VillageでCharlie(1998年に俺の左手をハンマーで叩き潰した本人)にお別れを伝えて、Tシャツをプレゼントされて、小さな子供と軽く会話して、楽しい思い出が頭をよぎって、泣きそうになりました。いや、少し泣いたかも。そしてIlluminaiton Villageのみなさんにも別れの挨拶をして、Big Hugをして、そして、帰路に着きました。

例年のように帰り道は車が渋滞して出口まですごい列ができていましたが、その横をチャリですり抜けて走るのはなかなか快適でした。

そして、エントランス近くには帰っていく参加者たちがドネーションとして残していった余り物の食料や水がてんこ盛りに置いてありました(私は当然ここに食料と水があることを知っていました)。

とりあえずめぼしい物はないかと物色をして、ある程度のお菓子を手に入れました(本来これは会場に残ってボランティア活動をする人へのドネーションです)。

んで、気がつくともうすぐ夕方だったので、これから帰るとしてもとりあえずブルーノのモーテルに泊まらないと危険だと思い、ひとまずそこまで走ろうかと考えてました。

でもなんだか突然メチャクチャ面倒くさく感じてきたのです。

ぐわー、ゆっくり風呂に入りたいー。
うまいメシ食いたいー。
肉とラーメンが食いたいー。
水洗トイレで用足したいー。
ポケモンキャッチャーしたいー。
ケーブル見たいー。
日本の雑誌読みたいー。
日本の女の子と会話したいー(かなり本音)。

おそらく、イベントが終了したことで緊張の糸がほどけたのでしょう。突然さまざまな贅沢欲求が生まれてきました。

そうだ軽くヒッチハイクをしてみよう。1時間だけでもいいや。チャリとデカい荷物があるからどうせ誰も乗せてくれないだろう。乗れなかったらブルーノのとこへ行こう。

コインをトスするような気持ちで親指をあげてヒッチを始めました。

チャリとデカい荷物を持って砂まみれの日本人、目一杯の笑顔を投げかけますが、みんなちょいと困った様子でゴメンって感じで通り過ぎていきます。

これはいけるだろ! というような巨大なトラックもあっさり横を通り過ぎていきます。

くじけることなく満面の笑みで親指を上げ続けました。

す・る・と、一台のキャンピングカーが私のちょっと先で停車したのです。おりょ? いいのかな? とりあえず行ってみよう・・・。チャリを軽く滑らせて近づいていくと、優しそうな、ピンクフラミンゴのデビアンのような、赤いドレスを身にまとった女性がドアから声をかけてきたのです!

「ひとり? 乗っていく?」
「ひとりです。チャリあるけど平気?」
「ぜーんぜん大丈夫よ!」
「うぉおお! あーりーがーとーう!」

彼女の名前はジャッキー。メキシコ籍の青少年(高校生くらい?)と7歳になる紫色の髪をした息子を連れてロサンゼルスからバーニングマンに遊びに来たとのことでした。

この男の子は「Sign Board Mania」で、興味を引くようなメッセージの看板があるとすかさず車を止めさせてキャッチしに行ってました。ここで、私の自転車工具が看板をパクるのに役に立ち、あっという間に仲良くなれました。

ジャッキーに自分はブラックロックまでチャリで来たこと、今年で3回目なこと、最初の年は骨折して大変だったこと、日本でバーニングマンを紹介するWEBを作っていることなどを話しました。

ジャッキーはとてもやさしく、気遣いのある人で、英語の苦手な私にゆっくりと話してくれたり、しきりに日本の話題を振ってくれました。

「日本料理も大好きなのよー」
「どんなの好き?」
「お寿司。フェイバリットはワサビね!」
「そ、それは寿司ではない・・」

途中、道路脇の砂地にタイヤを取られて動けなくなっている車を発見するとすかさず降りて助けに行ったり、牛がいるとすかさず降りて抱きしめに行ったり、ジャッキーのやさしさにまがりなりにも感服してしまいました。

そうそう、ブラックロックへ続く道を自動車で走る場合、絶対に舗装道路以外の場所を走らないようにしてください。ピラミッドレイク近くの砂は本当にやっかいなシロモノで、自動車でうっかり乗り入れるとタイヤを取られて走行不能になってしまいます。要注意!

そして自動車は速い速い!あっという間にガーラックを過ぎ、エンパイアを過ぎました。

マゲオとしては自分がチャリで来た道のりを感慨深く眺めていたかったのですが、男の子がやたらと私を気に入ってしまい(子供には好かれるのだ)、一緒に口オナラをして「FAKE FAKE」と笑いあったり、マラカスを振りながらデタラメな歌を歌ったり、懐中電灯を自慢し合ったり、魚のビデオをムリヤリ見せられたりして、気がつくとほとんどリノの近くまで来てしまいました。

「わたしたちはこのままロサンゼルスまで帰るけど、一緒に来ない?」
「ありがとう。でもリノで降りていきます」
「日本にはまだ帰らないんでしょ? ロスでしばらく過ごしていけばいいのに」
「うん。でも本当にリノで大丈夫。レイクタホに行ってみたいんです」
「そっか、残念。リノで泊まるところとかあるの?」
「うーん。とりあえず安いモーテルに泊まろうと考えてるんで、適当に降ろしてもらえると助かります」
「それじゃ、ひとまずなんか食べましょう」

ジャッキーは自分がベジタリアンだと話していました。
でも体重は私の倍はありそうで、ベジタリアンでも大きい人は大きいんだなーと思ってたのですが、一緒に食べ物を買っているときにその謎が解けました。

大きなマフィンケーキを袋にガンガン詰めながら、LLサイズのホットチョコを飲みまくり。なるほど、お菓子は確かに肉じゃないもんな。ていうか甘いもの食い過ぎ!! そりゃ大きくもなるっつーの。

「日本のお菓子のパッケージは世界一かわいいわよね!」と言ってたので、「m&m’sの方がかわいいよ」と伝えておきました。

そんなこんなで、リノへ到着しました。

9月4日 リノ

おおおー! フラミンゴ・ヒルトンの明かりが見える! シルバー・レガシーも見えてきた! うおおお! 戻ってきた!生きて戻ってきたぞー!! 長かったマゲオ旅にも、ひと休みの時が訪れてきたのでした。

「それじゃ、とりあえず自分でモーテル探してみます」
「こことかは? 一泊60ドルだって」
「60! 高くても30くらいでないとちょっと・・」
「バーニングマンから帰ってきたところなんだから、一泊くらいしっかり休みなさい。お金は平気だから」
「ううーむ・・」

そう言うとジャッキーは車を降りて、オフィスの扉を開き無愛想なモーテルのお姉ちゃんに40ドル渡したのです。

「これでここは20ドルになったわよ。しっかり休まないとダメでしょ」
「えええ! そんな悪いっすよ! 車に乗せてもらった上にモーテル代まで・・」
「いいからいいから」

無愛想なモーテルのお姉ちゃんは早くあと20出せよ、って感じでこちらを見ています。感謝の言葉をしっかり伝えたくても伝えられない語学力を悔しく思いました。今夜はここに泊まることにしました。

メキシコの青少年がチャリを車から降ろすのを手伝ってくれました。彼とは、年齢が微妙に近いようで離れていて、ちょっとカッコつけてて会話をほとんどしなかったのですが(年頃の親子のようだ)、最後には男同士、「Good Luck」と「Thanks」で握手をしました。

紫色の髪の毛の男の子は「なんで行っちゃうの? ロスには来ないの?」と悲しそうな顔をしながら言うので弱ってしまいました。
でもしっかりとバイバイをしました。指で押すと巨大なクリック音のするオモチャ楽器「Click Click」とマラカスをもらいました。あ、そいういえばこの子、X-Dreamのフライヤーをやたらと気に入ってましたっけ。

ジャッキーとHugをして、ジャッキーの肩越しに見えるリノのネオンが「戻ってきた」現実をあまりにも如実に表していて、ジャッキーやバーニングマン・ピープルとの別れがとても悲しく思えてきました。

「それじゃ、ありがとう! 気をつけて!」
「バアアアーイ!!」

ジャッキーの車が遠くに走っていきます。さようなら。本当にありがとう。本当にありがとう。さようなら。Good Luck!

モーテルに入って、砂まみれの体でベッドにダイブして、テレビをつけて、バスタブにお湯を溜めました。

9月4日 リノのモーテル

戻ってきた。リノだ。水道をひねればお湯が出て、外を歩くときにはカギをかけて服を着て、お金がないとご飯も食べられなくなってしまう町に帰ってきた。

あ、俺ひとりだ。昨日までのハッピーなバーニングマン・ピープルたちはここにはいないんだ。

せまいテントと寝袋で寒さと暑さに耐えながら眠っていたけど、今夜はこんなにフカフカのベッドなんだ。久しぶりに風呂に入ってシャンプーしなきゃ。うわ、水洗トイレだ! 文明社会だなー。Power Puff Girlsやってないかなー。

ぶくぶくぶく。湯船につかりながら、夢のような日々を思い出していました。
生きてまた風呂に入れてるのがすごいなーと思いました。本当にみなさんお世話になりました。
死ななくてよかったー。ケガもしなくてよかったー。
あああー! ほんとに戻ってきたんだ! おおおおおおお!

よっしゃ! 肉でも食いに行くか!! 俺は、生きてるぞー!!!!!!!

おしまい。

・・・追伸。ほんとにみなさんA.RI.GA.TO.U.